2010年に労働基準法の改正で、すでに大企業は、法定時間外労働が月60時間を超える場合、割増賃金率を50%の引き上げが行われていました
しかし、2019年に施行された「働き方改革関連法」により、2023年4月から、ついに中小企業においても大企業と同様に、月60時間を超える残業割増賃金率が50%へと引き上げられました
◆中小企業とは
今回の割増率変更対象の中小企業に該当するかどうかは、以下の条件で判断します
労働基準法第32条により、会社は、従業員に対して、休憩時間を除き一週間について40時間、各日について8時間を超えて、労働させてはいけません
「時間外労働」とは、この労働基準法第32条(法定労働時間:1日8時間 1週間40時間)を超えた労働時間のことで、会社は法に定められた割増率で計算された割増賃金を通常に支払われる賃金に上乗せして支払わなくてはなりません
具体的な割増賃金率は以下の通りです
・法定労働時間を超えた場合 25%以上×超えた時間
・法定労働時間が1か月で60時間を超えた場合
中小企業 25%以上×超えた時間(2023年4月まで)
大企業 50%以上×超えた時間
中小企業 50%以上×超えた時間(2023年4月以降)
・法定休日に労働させた場合 35%以上×労働時間
・深夜(22時から翌朝5時)に労働させた場合
25%以上×労働時間
※時間外労働と深夜労働が重なるなどした場合は、それぞれの割増率を足し算した割増率で計算されます
◆改正後の具体的な計算方法
1時間当たり1,000円の割増賃金
① 1か月60時間未満の場合 1,000円×1.25 = 1時間1,250円
② 1か月60時間超の場合 1,000円× 1.5 = 1時間1,500円
③ 休日労働の場合 1,000円×1.35 = 1時間1,350円
④ 深夜(22時から翌朝5時)労働の場合
1,000円×1.25 = 1時間1,250円
⑤ 休日労働+深夜労働の場合 1,000円×(1.35+0.25 ) = 1時間1,600円
⑥ 1か月60時間未満の時間外+深夜労働の場合
1,000円×(1.25+0.25 ) = 1時間1,500円
⑦ 1か月60時間超の時間外+深夜労働の場合
1,000円×(1.5+0.25)= 1時間1,750円
※ただし、休日労働(法定休日)については、通常の時間外労働とは異なり、1か月60時間を超えた後に休日労働が発生したとしても、通常の1.35%の割増率に変わりありません
◆割増賃金率の引き上げにより、中小企業がとるべき対応は!?
長時間労働が常態化すると、従業員の集中力低下によるミスや事故、健康にも弊害を及ぼします。また、会社は割増賃金率が引き上げられるため、人件費のコストが増大します。
そのため、会社は従業員の時間外労働時間を把握し、1か月60時間を超える残業を削減するよう、以下のように努めなければなりません
① 労働時間や業務内容の適切な把握
勤怠管理システムの導入など機械により労働時間を管理し、客観的に記録を確認できるようにします。また、従業員の業務内容をヒアリングし、特定の従業員に偏りがないかを把握します
業務内容やそれに係る時間など、業務状況が把握できたら、業務の分配を見直しするなど調整を行いましょう。
② 代替休暇を付与する
1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の方の健康を確保するため、 引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。ただし、代替休暇制度を導入するためには、過半数労働者との労使協定、就業規則への記載が必要です
◆まとめ
労働基準法は、原則的には1か月45時間、1年間360時間を超えての時間外労働を認めていません。この上限を超えての時間外労働が認められるのは、あくまでも臨時的な特別な事情がある場合に限られます。会社は、勤怠管理システムの導入により、適切に労働時間を管理、業務に無駄や偏りがないかを把握し、企業全体で時間外労働を減らす取り組みを行うことが大切です。
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