2026年5月28日木曜日

2026年10月1日にすべての企業に対してカスタマーハラスメントの防止措置(カスハラ防止法)が義務化されます

 近年ニュースでもよく耳にする「カスハラ防止法」、接客やサービス業を中心に深刻な社会問題となっているカスタマーハラスメント(カスハラ)から従業員を守るため、2026年10月1日から全国のすべての企業に対策が義務付けられます

専門用語をできるだけ省いて、ポイントをわかりやすく解説します

◆カスハラ防止法とは?

正式名称は「改正労働施策総合推進法」といいます。これまで「お客様は神様」という言葉の下で従業員が我慢を強いられがちでしたが、「企業は従業員を理不尽なクレームから守る義務がある」と法律で明確に定められました

  • いつから?: 2026年(令和8年)10月1日からスタートします

  • 対象は?: 従業員を1人でも雇っているすべての企業です。大企業だけでなく、中小企業や個人事業主、医療機関、NPO法人なども例外なく対象になります(中小企業向けの猶予期間もありません)

◆どこからが「カスハラ」になる?

厚生労働省の指針では、以下の3つをすべて満たすものをカスハラと定義しています

  1. 顧客や取引先からの言動である

  2. 要求の内容や態度が「社会の常識に照らして行き過ぎている」

  3. その結果、従業員が働きづらくなる(就業環境が害される)

具体的には、以下のような行為がカスハラに該当する可能性が高いです

カスハラの類型

具体的なNG行動の例

暴言や脅迫

「土下座しろ」「ネットに晒すぞ」「お前なんかクビにしてやる」

過剰な要求

規定外の返金や過剰なサービスを執拗に迫る

拘束・執拗なクレーム

何時間も電話を切らない、店内に長時間居座って説教をする

セクハラやプライバシー侵害

従業員の個人情報(名前やSNS)を聞き出す、隠し撮りをする


◆企業がやらなければならない「4つの義務」

2026年10月に向けて、企業は以下の体制を整える義務があります。これを怠ると、国(労働局)からの指導や勧告を受けたり、最悪の場合は企業名が公表されたりするリスクがあります

  1. 「カスハラには屈しない」という方針の宣言
    企業として「カスハラは許さない」という基準を作り、ポスターやウェブサイトなどで社内外にアピールすること

  2. 相談窓口をつくる
    従業員が被害に遭ったときに、一人で抱え込まずに相談できる窓口や担当者を決めておくこと

  3. 起きたときの対応ルールを決める
    「悪質な場合は警察に通報する」「一人で対応させず上司が代わる」など、現場を守るためのマニュアルを整備すること

  4. 報告した従業員を守る(不利益取扱いの禁止)
    「カスハラを報告した」「会社に対応を求めた」ことを理由に、その従業員をクビにしたり、評価を下げたりしてはいけないというルールです

以前は「クレーム対応も仕事のうち」と片付けられがちでしたが、これからの時代は「従業員を守れない企業は責任を問われる」ことになります。働く側にとっては非常に心強い法律ですね

◆カスハラに遭った時の現場での対処法や具体的な断り方

現場でのカスハラ対応における最大の鉄則は、「お客様を納得・満足させること」

を放棄し、「これ以上の被害を防ぎ、安全にやり取りを終わらせること」へ目的を切り替えることです

現場でスタッフを守るための具体的なステップと、そのまま使える「断りのフレー

ズ(スクリプト)」をまとめました


◆現場対応の3つの基本ルール

  • 一人で対応しない: 異変や理不尽さを感じたら、すぐに複数人(または責任者)で対応を代わる、もしくは同席します。密室を避け、オープンな場所で対応することも重要です
  • 安易に全面謝罪しない: 「ご不快な思いをさせたこと」には寄り添いますが、                                 事実確認が取れる前に「こちらのミスです」と非を認める言葉は絶対に避けます
  • 記録を残すことを宣言する: 「正確を期すため、これより録音(録画)させていただきます」と相手に伝えるだけで、ヒートアップを抑える強い牽制効果があります

◆【状況別】毅然と断る具体的なフレーズ
カスハラに対しては、曖昧な言葉や「申し訳ございません」の連呼は逆効果です。

「できないものはできない」と、会社のルールを盾にして明確に線を引きます

状況・相手の行動

NGな対応

具体的な「お断り」フレーズの例

過剰な要求


(規定外の返金や過度なサービス)

「私では判断できかねます」

(上に代われと要求される隙を与える)

「恐れ入りますが、弊社の規定により、これ以上のご要望にはお応えいたしかねます。」

暴言・大声


(威圧的な態度による恐怖の植え付け)


相手の怒りが収まるまで


ただひたすら謝り続ける

「そのような大声(暴言)でお話しされると対応できかねます。おやめいただけない場合は、お引き取りをお願いします。」

長時間の拘束


(電話を切らせない、居座る)


相手が満足するまで


何時間でも付き合ってしまう

「すでに〇分経過しております。これ以上のご案内はございませんので、本日はお電話を切らせていただきます。(失礼いたします)」


◆悪質な場合の「打ち切り」ステップ相手がヒートアップして会話が堂々巡りになったら、ためらわずに以下の手順で強制的に対応を終了させます

  1. 最終回答の提示: 「私どもからのご案内は以上となります」「これ以上お話しできることはございません」と結論を出します
  2. 警告(イエローカード): 「これ以上の要求をされるなら、対応を打ち切ります(退店をお願いします)」と明確な条件を伝えます
  3. 実行(レッドカード):警告に従わない場合、「お引き取りいただけないため、            警察に通報します」と宣言し、実際に110番通報します


企業がカスハラ対策の体制づくりを行う際は、このような「現場でそのまま使える
スクリプト(台本)」をマニュアルに落とし込み、スタッフが迷わず「NO」と言え
る明確な基準を設けておくことが非常に重要です。事務所や店舗の現場に「ここか
らは会社が盾になるから、毅然と対応してよい」という安心感を作ることが、従業
員を守る第一歩になります

2025年11月19日水曜日

社長、ご存知ですか?今年4月から「子育て社員」の働き方が変わっています!

 

今回は、会社と従業員の双方にとって非常に重要なニュースをお届けします。 今年(2025年)、育児介護休業法が大きく変わりました。これはいわゆる「義務」の話ですが、見方を変えれば**「採用に強い会社」「社員が辞めない会社」に生まれ変わるチャンス**でもあります


◆「小1の壁」がなくなります


これまで、「子供が小学生になったら時短勤務が終わり、フルタイムに戻れなくて退職」というケース(小1の壁)が社会問題になっていました。 今回の改正で、残業免除(残業なし)が小学校入学前まで延長され、看護休暇も小学校3年生まで使えるようになります。 さらに、看護休暇は「入学式」や「学級閉鎖」でも使えるようになるため、働くパパ・ママにとって非常に心強い制度になります

◆会社がやるべき対応は? 

「制度が変わるなら、今のままでいいや」とはいきません。具体的には以下の対応が必要です

  1. ルールの見直し: 就業規則(育児介護休業規程)を新しい法律に合わせて書き換える
  2. 現場への周知:4月からこう変わったから、気兼ねなく相談してね」とアナウンスする。
  3. 介護への備え: 40歳になった社員へ「介護休業」のお知らせをする仕組みを作る

◆「働きやすさ」を会社の武器に


今回の法改正にしっかり対応していることを求人票や面接でアピールできれば、優秀な人材の確保につながります。 逆に、対応が遅れると「法律を守らない会社」というレッテルを貼られかねません
「難しくてよくわからない」「何から手をつければいいの?」という場合は、ぜひ当事務所にお声がけください。御社の実情に合わせた無理のない運用ルールを一緒に考えましょう

【簡易チェック】

御社は大丈夫ですか?

育児介護休業規程の「子の看護休暇」は「小3」になっていますか?

「入園式」で休暇が取れるようになっていますか?

□ 40歳になった社員への通知書式は準備できていますか?                                   → 1つでも不安がある場合はご相談ください。

2025年7月27日日曜日

雇用保険基本手当日額が変更になります

 2025年8月1日(金)から雇用保険の「基本手当日額」が変更になります。雇用保険の基本手当は、労働者が離職した場合に、失業中の生活を心配することなく再就職活動できるよう支給するものです。具体的な変更内容は以下のとおりです


◆具体的な変更内容

1.基本手当日額の最高額の引き上げ

(1)60歳以上65歳未満 7,420円 → 7,623円(+203円)

(2)45歳以上60歳未満 8,635円 → 8,870円(+235円)

(3)30歳以上45歳未満 7,845円 → 8,055円(+190円)

(4)30歳未満      7,065円 → 7,255円(+190円)

2.基本手当日額の最低額の引き上げ

        2,295円 → 2,411円(+116円)

2025年3月13日木曜日

育児・介護休業法が改正されます!③

2025年4月1日と10月1日の2回に分けて段階的に「育児・介護休業法」が改正されます。男女ともに仕事と育児・介護を両立できるように、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や介護離職防止のための環境整備、個別周知・意向確認の義務化などの改正が行われます。ほとんどの企業が対応しなければならない義務が多く、施行日までに働き方の見直しや措置、就業規則の整備等理解しておく必要があります。今回は2025年10月1日に施行、会社が準備しておかなければならないことを説明していきます

◆育児・介護休業法の改正概要と施行時期

 2025年4月1日施行
子の看護休暇の見直し
② 所定外労働時間の制限(残業免除)の対象となる子の範囲拡大
③ 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワークの追加 
④ 育児のためのテレワーク導入の努力義務化
⑤ 300人超の企業に育児休業取得状況の公表義務づけ
⑥ 介護休暇の見直し
⑦ 介護離職防止のための雇用環境整備づけ
⑧ 介護離職防止のための個別周知・意向確認の義務づけ
⑨ 介護に直面する前の早期の情報提供
⑩ 介護のためのテレワーク導入の努力義務化
2025年10月1日施行
① 柔軟な働き方を実現するための措置づけ
② 柔軟な働き方を実現するための措置の個別周知と意向確認の義務づけ
③ 仕事と育児の両立に関する意向聴取と配慮を義務づけ

◆2025年10月施行 育児・介護休業法の改正のポイント

① 柔軟な働き方を実現するための措置づけ
 3歳から小学校就学前の子がいる従業員に関して、法令が定める以下の        措置のうち会社は2つを選択して措置を講じ、従業員はそのうちの1つを      選択して利用できます     

                                      ①始業時刻の変更

・フレックスタイム制

・始業終業時刻の繰り上げ繰り下げ(時差出勤)制        度

②テレワーク等

月に10日以上、時間単位で利用できるもの

③保育施設の設置運営等

保育施設の設置運営、ベビーシッターの手配や費用負担等

④就業しつつ子を養育す     ることを容易にするた     めの休暇の付与

                                                                                    年に10日以上、時間単位で取得できるもの

 

⑤短時間勤務制度

1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むもの

※併せて、15時間や7時間、短時間勤務日を固定       する等複数の措置を講じることが望ましい

     ⑤以外は、フルタイムで働くことが前提です。また、措置を選択するた          めには、従業員の意見聴取が必要です

② 柔軟な働き方を実現するための措置の個別周知と意向確認の義務づけ
 3歳未満の子を持つ従業員に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に     ①で選択した措置の個別周知と意向確認の義務づけ

 

周知時期

子が3歳の誕生日の1カ月前までの1年間          111か月達する日の翌々日から211か月に達する日の翌日まで)                                                                                                     ※例 R8.2.10 3歳誕生日の場合 R7.1.11R8.1.10

 

周知事項

①上記①で選択した措置の内容

②対象措置の申出先

③所定外労働(残業免除)・時間外労働・深夜業制限に関す           る制度

 

 個別周知・  意向確認の方法

① 面談(オンライン面談 可)

② 書面交付

③ FAXの送信(出力、書面作成できるものに限る)     

④ 電子メール等                                                                                    のいずれか    ③④従業員が希望した場合のみ

家庭や仕事の状況が変化する場合があることを踏まえ、従業員が選択した制度が適切であるか確認するためにも、育児休業復帰時や対象措置利用中など、上記時期以外でも定期的に面談を行うことが望ましい

③ 仕事と育児の両立に関する意向聴取と配慮を義務づけ
 従業員本人又は配偶者の妊娠・出産を申し出た時と、3歳になるまでの        適切な時期に、仕事と育児の両立についての意向聴取と配慮を義務付け

 

意向聴取の時期

① 従業員本人又配偶者の妊娠・出産を申し出たとき

② 従業員の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間    111か月に達する日の翌々日から211か月に達する日の翌日まで)

                                                   

聴取内容

① 勤務時間帯(始業および終業の時刻)

② 勤務地(就業場所)

③ 両立支援等制度の利用期間                               (介護休暇、所定外・時間外労働、深夜業の制限、所定労働時間の短縮等)

④ 仕事と育児を両立するための就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)

 

意向確認の方法

① 面談(オンライン面談 可)

② 書面交付

③ FAXの送信(出力、書面作成できるものに限る)     

④ 電子メール等                                            のいずれか   ③④従業員が希望した場合のみ


【改正後の個別周知等の義務 図解】

【改正後の仕事と育児の両立イメージ図】

2026年10月1日にすべての企業に対してカスタマーハラスメントの防止措置(カスハラ防止法)が義務化されます

  近年ニュースでもよく耳にする「カスハラ防止法」、接客やサービス業を中心に深刻な社会問題となっているカスタマーハラスメント(カスハラ)から従業員を守るため、 2026年10月1日から全国のすべての企業に対策が義務付けられます 専門用語をできるだけ省いて、ポイントをわかりやすく解...